JR常磐線の水戸駅からJR鹿島線の鹿島神宮駅までを結ぶ鹿島臨海鉄道大洗鹿島線に全区間乗車しました。
鹿島臨海鉄道は大洗鹿島線と鹿島臨港線からなる第3セクターの路線です。大洗鹿島線は旅客線、鹿島臨港線は貨物線となります。全線が茨城県内を走ります。
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もともとは北鹿島(現鹿島サッカースタジアム)〜奥野谷浜間で鹿島臨海工業地帯への輸送を目的とした貨物線で、成田空港への航空燃料輸送なども行っていました。その後、国鉄線として開業予定だった「鹿島線(水戸〜佐原)」のうち、水戸〜北鹿島(現鹿島サッカースタジアム)間を鹿島臨海鉄道線とすることになり、1985年に大洗鹿島線として開業しました。そして、残りの北鹿島(現鹿島サッカースタジアム)〜佐原間は国鉄鹿島線として開業します。
開業と同時に鹿島臨海鉄道大洗鹿島線は国鉄鹿島線の鹿島神宮駅まで片乗り入れを開始。一時は有料列車や快速列車も走りました。
常磐線で水戸駅にやってきました。茨城県随一の駅で、4面8線を有しています。
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鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の改札とホームはJRと共用で、8番線を使用しています。向かいの7番線には常磐線上野、東京方面の特急や普通列車がやってきます。
一度改札を出て、JRの自動券売機で切符を購入しました。水戸から鹿島神宮まで1,590円。
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ちなみに大洗までは3駅ですが、330円とやや割高。
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大洗鹿島線では交通系ICカードは使えません。そのため乗り換えの際は一度改札を出てきっぷを購入する必要があります。ただ、急いでいる場合は7・8番線へのコンコース上にSuicaの簡易改札があり、ここで出場後、大洗鹿島線内で清算という方法をとることができます。
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注意したいのが、大洗鹿島線の運行上の終点である鹿島神宮駅で2020年にSuicaの利用が可能になったため、水戸〜鹿島神宮でSuicaで乗車することが事実上可能になってしまうことです。その場合、常磐線、成田線まわりの運賃が差し引かれることになります。ただ実際には駅員のいる鹿島神宮駅でも降車時に車内で改札しており、ちゃんと鹿島臨海鉄道分の運賃が徴収されます。
また、大洗鹿島線には通過連絡運輸の設定があります。成田〜大洗鹿島線〜水戸〜常磐線・水郡線方面の区間限定です。
車両は8000形という気動車で、2両編成。関東鉄道常総線のキハ5000形に準じた設計だそうです。ロングシートの3扉車で、ワンマン運転します。真ん中の扉は両開き、両端の扉は片開きです。このほか、6000形という旧型車も在籍します。この車両は茨城県内に工場を有するJX金属のラッピング。
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運行形態は水戸から途中の主要駅である大洗までの運用が多く、鹿島神宮までの通しでの運用は1時間に1本から2時間に1本ほど。ほかに、もう一つの主要駅である新鉾田までの列車もあります。
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12:44発の鹿島神宮行きに乗車します。1時間28分の旅の始まりです。
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水戸駅を出るとまずは常磐線と並走して北に進みます。非電化路線なので、大洗鹿島線の線路だけ架線がありません。
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後ろから特急列車が追いかけてきました。
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すぐに追い越されます。
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大洗鹿島線はもともと国鉄線としての運行を前提に日本鉄道公団が建設した路線で、単線非電化ながら、全線が高規格路線となっています。当初は特急列車を運転する計画でした。踏切は水戸駅付近の常磐線と共用のものを除くと存在しません。すぐに高架線に入ります。
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単線非電化の高規格路線を2両の気動車がかっ飛ばしていく、というのはなんとも楽しいもの。駅間も広いのでかなり速いです。
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大洗までは毎時2〜3本と本数もあり、乗客の多い区間です。最初の停車駅、東水戸に停車します。水戸行きと行き違いました。あちらは1両編成。
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東水戸を出ると、左右に田園地帯が広がります。遮るものがなく、水が張られる時期や稲穂の時期はさぞ美しいでしょう。
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東水戸道路と交差して、続いての停車駅である常澄駅に到着です。近くに水戸大洗ICがあります。こちらも1面2線の行き違いが可能な構造です。
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常澄を出ると大きく右にカーブして進路を南に変えます。
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涸沼川(ひぬまがわ)を渡り、大洗町に入ります。涸沼から那珂川へと注ぐ川です。
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鹿島臨海鉄道の中心駅、大洗駅に到着しました。水族館やビーチなどもあり、観光利用も多い駅です。大洗駅で11分間停車します。鹿島臨海鉄道株式会社の本社もこの大洗駅にあります。奥には留置車両が見えました。6000形も見えます。
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当駅始発の水戸行きが先に出発していきました。
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反対側に6000形が連結されて留め置かれていました。こちらは普段は使われないのでしょうか。
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大洗を出ると海岸線に沿って進みます。ただ実際には海まで距離があり、線路が通るのはどちらかというと山岳部の景色。
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トンネルを抜けると堀割の区間です。両側に木々が迫ってきます。
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大洗を出ると、次は駅舎が可愛い涸沼駅に着きます。こちらは1面1線の駅です。各駅で乗降があるのが印象的でした。ここから鉾田市に入ります。
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高架区間を抜け、久しぶりに地上部分に戻ってきました。
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すぐに鹿島旭駅に到着です。ここでも対向の列車と行き違いました。あちらはノーマルな塗装の1両編成。
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しばらくは地上区間が続きます。徳宿駅に停まります。
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主要駅、新鉾田駅に到着しました。鉾田市の中心駅です。駅名に「新」がつくのは、かつて鉾田駅があったためです。鹿島鉄道という会社が常磐線の石岡駅から鉾田駅までを結んでいました。2007年に廃止となっています。その鹿島鉄道線はもともとは関東鉄道の鉾田線という路線でした。
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かつての鉾田駅は新鉾田駅から離れたところにありました。現在では関鉄グリーンバスの鉾田営業所が置かれています。
新鉾田を出ると、霞ヶ浦を構成する湖である北浦と鹿島灘の間を走っていきます。北浦湖畔駅の手前で北浦の水面が見えました。
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続いては大洋駅に到着。水戸から乗っていた多くの乗客の大半は降り、1両で十分な人数に。
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鹿島灘駅から鹿嶋市に入ります。鹿島大野駅では線路の有効長が大変長くとられていました。また、関東の駅百選にも認定されています。鹿嶋市は鹿島町と大野村が合併してできた市ですが、「嶋」の字を使用しています。これは合併当時すでに佐賀県に鹿島市が存在し重複を避けるため、また「嶋」を使用することに歴史的妥当性もあることから、「鹿嶋市」としたそうです。
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続いて長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅に到着します。こちらは潮騒はまなす公園の整備に伴い、自治体の要請によって1990年に誕生した駅です。かつては日本一長い駅名でした。
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荒野台駅に到着です。次の鹿島サッカースタジアム駅は臨時駅であることから、常設駅では大洗鹿島線の最南端の駅になります。
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荒野台を出ると速度を落とし始めます。ポイント通過のためです。
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どんどん側線が広がっていきます。貨物列車が使用する、鹿島サッカースタジアム駅構内の側線です。
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臨時駅の鹿島サッカースタジアム駅を通過します。鹿島サッカースタジアムからは鹿島臨港線が分岐しています。
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大洗鹿島線の終点は鹿島サッカースタジアムですが、臨時駅のため普段は停車しません。茨城県立カシマサッカースタジアムでの試合開催日のみ停車します。駅業務は鹿島臨海鉄道の方が行います。もともとは北鹿島駅という貨物駅で、現在でも貨物列車が運転されます。定期列車として、東京貨物ターミナル駅との間の便と、越谷貨物ターミナル駅との間の便とがそれぞれ1往復運転されています。
また、1日1本ある総武快速線からの直通の鹿島神宮行きの列車が、この鹿島サッカースタジアム駅で夜間停泊します。久里浜始発(土休日は東京始発)の総武快速線が佐原駅で分割し、付属編成の4両編成が鹿島神宮駅までやってきます。鹿島サッカースタジアム駅で夜間停泊後、翌朝の一番列車として鹿島神宮始発東京行きとなります。そのほか、サッカー開催時にJR東日本の列車が鹿島サッカースタジアム駅まで営業運転することもあります。
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鹿島サッカースタジアム駅からはJR鹿島線に乗り入れます。このひと区間がJR線であるため、例えば青春18きっぷなどのフリーきっぷを使う場合、JR線の部分を二重に払う必要がないように、臨時駅であるにもかかわらず、鹿島サッカースタジアムまでの切符が常時発売されています。
鹿島サッカースタジアムからは頭上に架線が張られます。電化されていて、JRの電車が乗り入れられるようになっています。となりの線路は鹿島臨港線です。
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再び高架線に入り、スピードを出します。右に大きくカーブしていきます。
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終点の鹿島神宮駅に到着です。鹿島神宮は1面2線の駅です。鹿島臨海鉄道の車両が1番線を、JRの車両が2番線を使います。鹿島神宮駅は有人駅ですが、ここでも前の車両の一番前のドアのみを開け、切符を持っていない人の車内清算を行います。
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向かい側にやってくるJRの車両は新型のE131系。こちらも2両編成です。佐原まで向かいます。このほか、前述のように東京行きと、さらに成田行きも早朝にそれぞれ1便ずつあります。かつては特急あやめが乗り入れ、佐原~鹿島神宮間は普通列車として運用されていましたが、2015年に廃止されました。
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鹿島神宮駅の外に出ます。言わずと知れた鹿島神宮の最寄り駅です。駅前からは、特急あやめを廃止に追いやった高速バス「かしま号」東京行きや、羽田空港、東京ディズニーリゾート行きの高速バスが出ています。また、自転車を持ち込める列車「B.B.BASE」も乗り入れます。
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高規格路線をディーゼルカーが飛ばしていく楽しい路線です。ぜひ乗ってみてください。
鹿島臨海鉄道のフリーきっぷはありませんが、茨城県内の鉄道(JR東日本、関東鉄道、鹿島臨海鉄道、ひたちなか海浜鉄道、真岡鉄道)に土休日限定で自由に乗れる「ときわ路パス」が大人2,180円でお得です。鹿島臨海鉄道水戸~鹿島神宮間が片道1,590円なので往復するだけでもお得になります。JR鹿島線は潮来駅まで使えます。ひたちなか海浜鉄道や関東鉄道などと合わせてぜひ使ってみてください。
関東鉄道竜ヶ崎線に乗車した記録はこちら。