西武多摩川線とは、JR中央線の武蔵境駅から是政駅までを結ぶ、西武鉄道の路線です。他の西武の路線とは孤立しています。
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もともと多摩川の砂利取り路線として生まれ、その後西武鉄道のネットワークに組み込まれました。沿線には大学のほか、味の素スタジアムや多摩川競艇場などがあります。
中央線で武蔵境駅にやってきました。JR線、西武線とも高架の駅です。
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西武線の改札は南側。JR線の改札の隣にあります。
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JRとの乗り換え改札もあります。孤立路線のため、単に「西武線」と案内されています。
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西武多摩川線の武蔵境駅は1面2線の島式ホーム。日中は3番線のみ使います。JR線と通しの発着番線になっています。毎時5本のパターンダイヤです。
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車止めはホームのすぐ先。
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車両はすべて、西武新101系。ホームにいたのは「赤電カラー」の車両でした。3つ扉が特徴です。
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隣の中央線ホームでは10両編成の快速列車が頻繁にやってきますが、こちらは4両編成のワンマン運転。
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車止めの反対側を見に行くと、西武多摩川線からJR線への連絡線が見えました。
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赤電はすぐに出発してい待ったので次の「近江鉄道カラー」に乗ります。
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運転士さんが反対側に移動し、出発の準備をします。私は後ろから景色を眺めることに。
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出発時に、「西武線が発車します。ご注意ください。」とのアナウンスが流れます。JRのホームがすぐ隣にあって、アナウンスが聞こえるため「西武線が」と言うのだと思います。
左側に先ほど見たJR線への連絡線が伸びていきました。西武の車両の甲種輸送時にこの線路を利用します。のちほど見ていきます。
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多摩川線はすぐに高架を降りて南に大きくカーブし、新小金井駅へと入っていきます。
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新小金井駅では上り線との交換が行われます。新小金井駅と白糸台駅で交換があります。すれ違ったのは「ツートンカラー」の新101系。
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なお、新小金井駅は武蔵小金井駅や東小金井駅より先にできましたが、「新」と付くのは当時すでに東北本線の小金井駅があったためです。東京都小金井市内では新小金井駅が最古の駅です。
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沿線には桜や菜の花が咲き誇っていて美しいです。
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野川を渡ります。右手は公園になっています。
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野川周辺は盛り土がされ築堤になっています。このあたりでは電車の架線とは別に、東京電力の大きな鉄塔も架かっています。
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多磨駅に到着。1面1線の駅です。かつては2面2線の地上駅で、構内踏切がありました。
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東京外国語大学の最寄駅です。そもそもこのあたり一体に外大や警察学校、スタジアムなどが並ぶ理由は、戦時中に陸軍航空部隊の基地として開発され、戦後に接収された後に返還された広大な敷地があったため。
多磨駅で多くの人が降りていきました。西武多摩川線の電車は1号車が「サイクルトレイン」になっており、日中は自転車を持ち込むことができます。車内には自転車を固定するためのベルトが備え付けてあります。
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3扉車のため、運転台の前にも座席があります。
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白糸台駅で下車してみました。先ほど見送った「赤電カラー」と交換です。
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白糸台駅には西武多摩川線の車両基地があります。ちょうど、「伊豆箱根鉄道カラー」の電車が清掃中でした。
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白糸台駅は昔ながらのつくりの駅で、構内踏切や手洗い場があります。また、白糸台駅は京王線の武蔵野台駅との乗り換え駅で、乗り換え案内も流れます。ホームの端から京王線が見えます。武蔵野台駅まで徒歩で7分ほど。
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次にやってきたツートンカラーに乗ります。やはり西武鉄道はこの色。
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自転車を持ち込める車両の乗車位置案内もありました。
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サイクルトレインはかなり成功しているようにみえます。この日に見たすべての電車に複数の方が自転車を持ち込んでいました。定着し、活用されているようです。
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京王線と立体交差します。武蔵野台駅は画面右手の方にあります。
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続いて中央自動車道と交差します。その後右手に大きくカーブして多摩川に並行するように進みます。
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競艇場前に停車します。多摩競艇場の最寄り駅です。もともと多摩川の砂利採取場だったところが競艇場になりました。そのためかつてはこの駅から支線が伸びていました。
競艇場前駅はかつては2面2線の駅だったようですが、反対側のホームは線路も剥がされ、使われていません。
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しばらく進み、府中街道の手前が終点の是政駅です。
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是政駅は1面1線のシンプルな駅。電車は折り返しすぐに武蔵境行きとして出ていきます。
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PASMOの簡易改札機が置かれています。
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車止めの先の敷地には枕木が積み上げられていました。
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かつて多摩ニュータウン計画において、小田急電鉄や京王電鉄と同様に西武鉄道もこの多摩川線を延伸して多摩センターまで乗り入れる計画を持っていましたが、諸般の事情により却下されました。小田急や京王と違い、西武多摩川線は都心まで乗り入れないため、武蔵境駅での乗り換えで中央線の混雑がさらに助長されるとの判断があったようです。
また、武蔵境から先、田無駅やひばりが丘駅まで延伸する構想もあったとか。こちらのほうが現在でも有用性が高そう。
是政駅周辺を散策します。多摩川に架かる府中街道の是政橋が立派です。この橋を渡ると南武線の南多摩駅に出ます。
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是政の由来は、この地を開墾した井田摂津守是政に由来するそうです。是政橋が架かる前は渡し舟があり、「是政の渡し」と呼ばれていました。
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また、是政橋は2020年東京オリンピックの自転車競技のルートになったそうです。
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是政橋から西側を望むと、南武線の橋梁が見えました。その先には武蔵野線(武蔵野貨物線、武蔵野南線)の橋も架かっています。ちょうど貨物列車が走っていました。おそらく武蔵野線の方を走っているのでしょう。
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新緑が美しい土手に降りてみます。今度は機関車が重連で走っていきました。
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続いて南武線の電車がやってきました。こちらは手前の橋を渡っています。
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再び多摩川線で武蔵境に戻ります。
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最後に、多摩川線の車両の甲種輸送ルートを辿ってみましょう。多摩川線の車両を西武線の本線に戻す場合、JR線を経由して甲種輸送を行います。
白糸台からまずは自走で武蔵境駅に入り、西武の武蔵境駅に入ってきたJRの機関車と連結して、最初に見たJR中央線への連絡線を通り中央線に入ります。八王子駅まで走った後、向きを変えて、国立駅を経由し、武蔵野線への渡り線を通って武蔵野線に入ります。武蔵野線を新秋津駅の手前の、西武とJRの連絡線まで進みます。JRの機関車はここまで。連絡線からは西武鉄道の牽引車として使われている新101系263Fに連結し、西武池袋線に入り、小手指車両基地に向かいます。
このような一見面倒なルートで回送されていきます。もちろん頻繁に目にするものではありませんから、見かけたらラッキー。
JR武蔵野線新秋津駅の手前から西武池袋線に入る連絡線についての記事はこちら。
さて、武蔵境を出るとまずは八王子へ。これは、中央線と武蔵野線の連絡線が新秋津方から八王子方に伸びているためです。さらには、新秋津で引き渡す際に機関車が後ろについてないといけません。
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人間の甲種輸送こと私はもちろん西国分寺駅で乗り換え。新秋津までやってきました。
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新秋津駅からすぐの秋津神社に向かいます。西武池袋線から伸びてきた連絡線はこの秋津神社の下を通って新秋津駅の南側に出ます。
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秋津神社の裏手に行くと、トンネルに入る前の連絡線が見えます。
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西武多摩川線の甲種輸送が行われるのは年に4回ほど。この連絡線を列車が通る様子や、中央線を回送されていく西武新101系を見てみたいですね。
西武多摩川線にもぜひ乗ってみてください。沿線住民の通勤通学需要や沿線の学校への通学需要、ボートレース場へのレジャー需要など、双方向に需要のある重要な路線でした。
【追記】 西武鉄道によると、2025年度以降、西武多摩川線に元東急電鉄9000系電車(西武での形式は未定)が導入されることが発表されました。これは、西武鉄道が取り組むSDGsへの貢献や環境への配慮を目的とした「サステナ車両」の導入によるもので、省エネ化のほか固定費削減が見込まれます。これにより、現在活躍している新101系は徐々に置き換えられていく予定です。