神奈川県横須賀市の久里浜と千葉県富津市の金谷を結ぶ航路「東京湾フェリー」に乗船しました。
東京湾フェリーは久里浜港と金谷港の間を40分で航行します。2隻のカーフェリーが就航中です。三浦半島と房総半島を結ぶフェリーとして長い歴史を持ちます。
今回は都内から京急線で久里浜まで向かい、東京湾フェリーで往復して再び久里浜に戻ってきます。同ルートで旅行する場合、京急が販売する「東京湾フェリー往復きっぷ」というデジタルきっぷが大変お得です。往復の京急線(発駅~京急久里浜駅)、京急久里浜駅から東京湾フェリーのりばまでの往復の京急バス、そして往復の東京湾フェリーがセットになっています。片道版もあります。
私はそのきっぷの存在を失念しており、正規運賃で旅行しました。まずは品川駅から京急線の快特三崎口行きに乗車します。おすすめは転換クロスシートの2100形で運行される列車です。時刻表やホームページに2100形の運用が載っているわけではありませんが、見分け方としては、平日日中は、泉岳寺始発、品川始発の三崎口行き、京急久里浜行きの快特列車などに充当されることが多いです。空港線方面には行きません。また、都営浅草線方面にも入りません。土休日はウィングシートを連結する列車が2100形です。有料のウィングシートのみならず、普通席も転換クロスシートになっています。
品川から京急久里浜までは快特で56分。一気に三浦半島まで来ました。京急久里浜到着時に、東京湾フェリーへの乗り継ぎの案内がなされていました。
京急久里浜駅から東京湾フェリーののりばまでは京急バスに乗ります。徒歩だと30分ほどかかります。乗車するのは京急バス「久7系統」または「久8系統」。京急久里浜駅の東口に出てすぐの2番のりばから出発します。「フェリーゆきのりば」と書かれているのでわかりやすいです。ちなみに京急バスの横須賀地区には大型電気バスも投入されており、運が良ければそれにあたるかもしれません。
満員のバスはすぐに東京湾フェリーのりばに到着です。奥には乗船する乗用車が待機しているのが見えます。
乗船するフェリーが出発を待っていました。
まずはきっぷを購入します。私は往復券を購入しました。7日間有効で1,780円。片道1,000円なので220円お得です。券売機で購入できます。
また、到着後下船せずすぐに折り返す「遊覧割引」1,250円というきっぷもあるそうです。その場合は窓口で購入します。私はこれでもよかったのですが、金谷を散策してみたかったので通常の往復割引きっぷを購入しました。
のりばには三浦半島の名物が並ぶ売店のほか、レストランも併設されています。名物の横須賀カレーや三浦半島の海の幸が堪能できるようです。
徒歩での乗船の場合、2階にあがり、ボーディングブリッジで乗船します。自動車の場合はきっぷを購入後、車内で待機し乗船します。東京湾フェリーはバスのような感覚でかなり気軽に利用することができます。出航の10分前にきっぷを購入して乗り込みましたが、それより後に乗ってくる人も多くいました。もちろん余裕を持って行動するほうがいいでしょう。
ボーディングブリッジ上で改札があります。このきっぷは下船時に回収されますのでなくさずに持っておきましょう。
乗船するのはかなや丸。1992年就航のカーフェリーです。東京湾フェリーは2隻体制で運航しており、もう一隻存在しますが、この日はかなや丸一隻での運航でした。
客室甲板から1階客室へと入ります。この下に車両甲板があります。
1階客室は船内前方に一般座席が並びます。手前にはゴルフクラブの置き場所がありました。
座席は鉄道車両の座席と似た2列掛けのふかふかの座席です。鉄道や航空機もそうですが、90年代に作られた座席はこうしたどっしりとした座席が多く、快適。
階段をあがり、2階客室に向かいます。2階客室は前方が一般座席で、中ほどに売店スペースがあり、後ろにはラウンジのようなスペースになっています。一般座席にも4人掛けや人掛けの向かい合わせのものもあり、団体客が談笑しながら船旅を楽しめるようになっています。この便は平日の日中でゴルフ客もいなかったので、一般座席はガラガラでした。
売店には軽食や飲み物のほか、お土産等も売っています。
後ろのラウンジのようなスペースはゆったりとしており、家族連れや大人数での旅行に良さそうです。
船内に東京湾の地図が貼られていました。東京湾フェリーは東京湾の入り口であり、半島間が狭くなった部分である浦賀水道を横断しています。東京湾に出入りする船は大型小型を問わず大変多く、東京湾フェリーはその間を縫うようにして航行します。そのため東京湾フェリーの売りの一つは、さまざまな船舶を眺められることです。大型のタンカーや豪華客船、伊豆諸島へ向かう東海汽船のジェットフォイルなどが船内から肉眼で確認できます。また、東京湾フェリーは名目上国道16号の一部を形成しています。国道16号は横浜市を起終点として首都圏を環状に走る国道です。その海上区間が東京湾フェリーとなります。
東京湾フェリーは神奈川から千葉まで直接行けて便利なことから、かつては非常に人気で、最盛期には3隻で運航していました。また、この久里浜~金谷航路のみならず、浦賀~金谷航路、そして横浜~木更津航路も開設されました。しかし、地図にもあるように、1997年により都心に近い場所に東京湾アクアラインが開通し、また2009年にアクアラインが値下げされてことで、東京湾フェリーの利用客は一気に落ち込みます。久里浜~金谷航路のみとなり、2隻での運航が続けられています。
そんな東京湾フェリーを応援すべく、売店で軽食を購入することに。人気のいわしバーグを購入しました。
この便は空いていたので、窓側4人掛けのボックスシートでゆっくり景色を眺めることに。いわしバーグは大当たりで、めちゃくちゃ美味しかったです。ぜひ食べてみてください。
出航です。向きを変えながら久里浜港をゆっくりと離れていきます。
久里浜港は横須賀港を構成するひとつで、港湾法上の重要港湾、そして港則法上の特定港に指定されています。
進行方向右手に横須賀火力発電所が見えてきました。完成当時は発電力が世界最大だったそうです。
港を出ても波は穏やかで、ほとんど揺れもありません。また、交通量の多い浦賀水道を通るため、非常にゆっくりとした速度で進みます。奥にはすでに房総半島がはっきりと見えています。
金谷まで40分間のゆったりとしたクルーズの始まりです。
眼前の一番高くなっている部分は鋸山です。麓から京成グループのロープウェーも運行されています。
また、浦賀水道を航行する船舶が多数確認できます。東京湾フェリーは東京湾の内外を行き来する船を横切るようにして航行するため、操舵には大変神経を使うでしょう。
奥に大型客船が見えてきました。東海汽船のさるびあ丸でしょうか。この東京湾フェリーの久里浜~金谷航路ももともとは東海汽船が運航していました。また、先ほどの久里浜港では東海汽船のジェットフォイルも土休日に限り発着しています。
まもなく金谷港に入ります。港湾法上は浜金谷港と呼ばれ、千葉県が管理しています。
下船の準備をして2階の下船口へと降ります。
久里浜と金谷では下船口が違います。レトロなサインに従ってぞろぞろと下船します。下船した先できっぷが回収されました。
金谷ののりばは大半をお土産屋さんが占めており、その奥にレストランがありました。
ちょうど日東交通の路線バスが出ていくところでした。金谷港に接続するバス路線は2路線あり、どちらも日東交通が運行しています。千葉駅方面から館山駅、安房白浜駅を結ぶ高速バス「南総里見号」と、房総半島を横断する路線バスの安房鴨川駅、亀田行きです。写真のバスは亀田行きで、この東京湾フェリーが始発となっています。
東京湾フェリーの英語表記はTokyo-Wan Ferry。
乗船してきたかなや丸が再び久里浜に向けて出航の準備をしています。
金谷港の最寄り駅は、内房線の浜金谷駅。徒歩6分ほどの距離です。歩いてみることに。東京湾フェリーのりばの隣には、食事や買い物が楽しめる南房総のマーケットプレイス「the fish」があり、大変賑わっています。
また、その先にはグランピングのような滞在が楽しめるコテージ「BAYSIDE KANAYA」があります。全室が海沿いに面した素敵な宿泊施設です。
国道127号線なぎさラインから一本入ると古き良き浜金谷駅が現れます。
ちょうど普通列車が交換待ちしているところでした。最新鋭のE131系での運転です。
駅舎は木造で、簡易改札機が設置されています。土休日には特急新宿さざなみ号が1往復停車します。この日は平日でしたが、普通列車の到着に合わせて多くの乗客が降りてきました。外国人観光客も多く見られたのが印象的でした。
再び金谷港に戻ります。出航の30分以上前から乗船の車の待機列がかなりの長さになっていました。
また、近隣のゴルフ場からの送迎バスが多数到着し、のりばはゴルフ客でごった返していました。再びかなや丸に乗り込みます。
客室はゴルフの客で混みあっていたので、帰路はデッキで過ごすことに。浦賀水道の風を感じながら向かいます。
デッキにはベンチが多数用意されており、皆思い思いに過ごしていました。この日は風も強くなく快適。
車が積み終わり、出航です。ゴルフ客のほか旅行帰りの家族連れもいらっしゃいました。
徐々に晴れてきて、山肌がくっきり見えました。
穏やかな波の上を房総の山々を眺めながら進むのは心穏やかになるものです。
ゆりかもめとかもめ、そしてトンビがついてきました。その奥を列をなしたタンカーが進んでいます。
最上部の甲板は人も少なく、景色を眺めたい人だけがそれぞれに楽しんでいました。
奥にはグリーン室があります。グリーン室はルームチャージ3,300円で最大大人20人までが入れる特別な部屋です。かなや丸としらはま丸のどちらにも備わっています。売店の営業時間にのみ利用可能なため、金谷6:15発と久里浜19:15発は利用できません。
グリーン室の内部はこんな感じ(東京湾フェリーのホームページより引用、しらはま丸のグリーン室の様子)。
最前部には操舵室があります。
無事久里浜港に戻りました。
帰りはJRの久里浜駅まで歩くことに。ゆっくり歩いて30分強で到着しました。JR横須賀線で都心方面に戻ります。ちょうど成田空港行きのグリーン車連結の列車がやってきたので乗車することに。この列車は途中の逗子駅で後ろに4両編成を増結します。
また、この列車は成田駅で4両を切り離します。その4両は一往復のみ存在する鹿島線直通の鹿島神宮行きになります。
JREポイントを引き換えてグリーン車に乗車しました。久里浜出発時点では貸切でした。
JREポイントでのグリーン車の乗車方法はこちら。
神奈川から千葉に向かう利便性は東京湾アクアラインに譲ったものの、東京湾フェリーはいまだ多くの人に愛されていることがわかりました。特にゴルフ客の多さは目を引きました。人口の多い神奈川の臨海部から車で久里浜港までやってきて徒歩でフェリーに乗り、金谷港から送迎バスでゴルフ場へと向かうコースです。
また、神奈川方面から往路は東京湾フェリーを利用し、復路はアクアラインで帰るという車利用の方の声も聞かれました。子供連れであればフェリーに乗ること自体が忘れられない体験ですし、ドライバーの方も乗船中は休むことができます。さらに、京急の連絡きっぷが発売され続けていることは、都心や横浜方面から徒歩で乗船する客が依然として多くいることを示唆しています。両港が鉄道駅に接しているので、鉄道とフェリーを利用して東京湾を一周するのも楽しい旅になるでしょう。その際京急とフェリーが一体となった片道きっぷを利用すれば思いのほか安く済みます。
久里浜を含む横須賀は言うまでもなく、金谷でも外国人観光客を多く見ましたが、船内では見受けれられなかったため、訪日客へのプロモーションがさらになされるとよいのにと思いました。訪日回数が増え、定番観光地に飽き足らず日本人しかいないエリアをめぐりたい観光客が増えているのは周知のところです。
観光の一角に、また純粋なクルーズの楽しみに、ぜひ乗船してみてください。