拝島駅は青梅線、五日市線、八高線、西武拝島線が発着するターミナル駅ですが、近隣にある米軍の横田基地に向かう貨物線「横田基地専用線」も走っています。
通常運行されるのは横田基地へジェット機などの燃料を運ぶ貨物列車で、通称「米タン」と呼ばれます。専用線は駅から分岐するのではなく、駅の南側から分岐し、西武拝島線と平面交差して駅の北口側の駅前を通り、住宅街を抜けて横田基地に向かいます。途中、五日市街道を踏切で渡ります。
専用線について、詳しくはぜひこちらを読んでください。
「米タン」は鶴見線の安善駅付近にある米軍の貯油施設から、鶴見線、南武支線、武蔵野線(武蔵野貨物線)、南武線、青梅線経由で運行されています。運行は主に火曜日と木曜日に行われることが多いようです。
流れとしては、まず午前中に新鶴見機関区から電気機関車とディーゼル機関車が専用線を通って横田基地にやってきます。ディーゼル機関車が空のタンク車を拝島駅構内まで運び、次に電気機関車が安善駅まで運びます。安善駅近くの貯油庫でタンクを満タンにして、午後に再び拝島駅に戻り、専用線を通って横田基地に運びます。最後に機関車たちが新鶴見機関区に戻る、という形です。専用線は非電化なのでディーゼル機関車が担当します。「米タン」輸送にあたって、貯油施設から安善駅間を担うディーゼル機関車、安善駅から拝島駅間を担う電気機関車、そして専用線のディーゼル機関車と、計3機が活躍しています。
今回は安善駅からやってきた貨物列車が専用線を通って横田基地に向かうところを見ようと思い、夕方に拝島駅にやってきました。
拝島駅に到着すると、駅の昭島方に「米タン」を担うディーゼル機関車がいました。電気機関車が燃料を運んでくるまで待機しています。
横田基地からは米軍機が頻繁に飛び立ちます。その燃料がこうしてJR貨物によって運ばれています。
16:07ごろ、青梅線から機関車の汽笛が聞こえ、「米タン」の貨物列車がやってきました。機関車はEF210。2022年に製造されたばかりのEF210-342号機です。本線からホームのない中線に入ります。
繋がれているのはタキ1000。「安善駅常備」と書かれていますが、基本的には普段は横田基地内に留め置かれているものと思われます。「JP-8」とは、米軍のジェット機燃料の規格名です。
大量のタキを連ね、拝島駅に停車します。青梅線上りの進路をふさぐため、合間を縫ってやってきます。
貨物列車が中線で停車すると、今度はディーゼル機関車が動き出しました。
「米タン」に使われるのはDD200-23号機。今朝新鶴見機関区からやってきて、横田基地から空のタキを受け取り、専用線を通って電気機関車に引き渡し、日中休んだ後再びこうして業務につきます。「愛」とあり、愛知機関区の所属だとわかります。
ディーゼル機関車が最後尾に連結され、こちらが先頭になります。2度スイッチバックする形で専用線に入ります。先頭では電気機関車が連結を解除されています。一連の流れはとてもスムーズに素早く行われていました。
ディーゼル機関車を先頭に貨物列車が走り始めました。ディーゼル機関車が先ほどいた、八高線方面の線路に入っていきます。その後、再びディーゼル機関車を切り離し、今度は反対側の先頭に連結します。青梅線から専用線には繋がっていないため、こうした作業が必要です。
拝島駅改札内にあった地図を見てください。配線図が丁寧に示されています。上が青梅線で下が八高線です。専用線は八高線にしか繋がっていません。また、西武拝島線と平面交差します。そのため、西武線のダイヤとも調整が必要です。
今度はいよいよ専用線の脇から列車を眺めます。拝島駅北口に出ました。
目の前を専用線が通っています。駅前ロータリーの先に線路があり、踏切がある不思議な光景です。一応専用線は拝島駅構内という扱いだそうです。
貨物列車が機関車を先頭に付け替えている間に付近を散策しましょう。この駅前の踏切は横田第一踏切。
頻繁に米軍機が離陸しています。「米タン」は基本的には火曜と木曜の週2回ですが、国際情勢の変化によって増えたりもするそうです。
踏切の横を玉川上水が流れています。玉川上水に架かる橋は平和橋というそうです。
美しい玉川上水の流れの上を非電化の単線が通り、米軍に燃料を供給する貨物列車が走ります。
16:25、踏切が鳴り遮断機が下り始めました。普段は週に計8回だけのレアな光景です。
ディーゼル機関車を先頭に、キイキイと音を響かせて列車が走ってきました。
列車は住宅街を抜け、五日市街道を踏切で横断し、横田基地内に入ります。
横田基地でタキを米軍に引き渡し、再び機関車はこの線路を通って戻ってきます。
駅のコンコースから眺めることに。16:46、機関車が単機で駅前に戻ってきました。再び拝島駅構内で2度スイッチバックしたあと、そのまま新鶴見に戻ります。電気機関車の方は先に帰っていく音が聞こえました。
最後に西武線のホームから線路がどうなっているかを眺めます。左から伸びているのが専用線です。西武線と平面交差しながら八高線の方に伸びているのがわかります。
ディーゼル機関車がスイッチバックを経て拝島駅に戻ってきました。再び向きを変えて新鶴見機関区まで戻ります。
米軍基地への輸送という特殊な貨物列車「米タン」を一度見てみたかったので、興味深く見学しました。通常は平日の2日間のみですが、ぜひ足を運んでみてください。
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