東京23区内には、蒸気機関車(SL)が静態保存された公園が数多くあります。その数はおそらく20以上。SLが世代を超えて愛されているのがわかります。
今回はそんなSLが展示されている公園を実際に訪れて10か所選びご紹介します。なるべく各区でまんべんなく紹介していきます。
【北区】飛鳥山公園 D51機関車
北区の王子駅から徒歩すぐの飛鳥山公園には、蒸気機関車と都電の車両の展示があります。SLはD51 853。昭和18年に国鉄鷹取工場で製造され、吹田機関区や姫路機関区など主に関西で活躍後、晩年は酒田機関区に所属、昭和47年に廃車となり、飛鳥山公園にやってきました。D51は大型貨物用蒸気機関車で、日本で最も多く製造された代表的な蒸気機関車です。
都電6080は昭和53年まで都電荒川線で走っていた車両だそうです。飛鳥山公園の北側をぐるっと回るように荒川線は走っています。
アクセス | JR京浜東北線「王子駅」から徒歩すぐ 東京さくらトラム(都電荒川線)「王子駅前」から徒歩すぐ 東京メトロ南北線「王子駅」から徒歩3分 |
展示機関車 | D51 853機関車 |
飛鳥山公園は鉄道好きな方にとても楽しい場所で、王子駅から公園までは自走式モノレールの「アスカルゴ」に無料で乗ることができ、都電荒川線が走る姿も眺められます。また、公園の東側ではJR京浜東北線や湘南新宿ライン、上野東京ラインなどのほか、新幹線が走る姿も楽しむことができます。園内にある博物館や資料館なども併せて楽しんでみてください。
【世田谷区】世田谷公園(交通広場)D51機関車
世田谷区の世田谷公園には交通広場があり、D51 272機関車が展示されています。こちらも保存状態がよく、往時の姿をしのぶことができます。前面には手作りのヘッドマークが。こちらのD51は主に九州や広島での貨物輸送で活躍し、厚狭機関区で廃車ののち、世田谷公園にやってきました。
アクセス | 東急世田谷線、東急田園都市線三軒茶屋駅 徒歩18分 東急田園都市線池尻大橋駅 徒歩18分 |
展示機関車 | D51 272機関車 |
公園内の交通広場の中にあり、利用時間が決まっています。4~10月は9時~17時まで、11月~3月は9時~16時半まで。私は池尻大橋駅から歩いていきました。とにかく広い公園なので、散策してリフレッシュすると良いでしょう。
【世田谷区】大蔵運動公園 C57機関車
世田谷区は広いのでもう一つ。砧公園の隣にある大蔵運動公園に設置された蒸気機関車C57 57です。C57は旅客列車用の蒸気機関車として愛された機関車で、こちらも日本を代表する蒸気機関車の一つです。同形式のものが「SLやまぐち号」として現在も走っています。注目すべきは、雪かき用のスノープラウがついていることです。これは、このC57 57が小樽、室蘭、苗穂、岩見沢と北海道で活躍したためです。
アクセス | 成城学園前駅、二子玉川駅から東急バス |
展示機関車 | C57 57機関車 |
最寄りのバス停は「大蔵第二運動場」など。広大で自然豊かな砧公園の隣にある、運動場などがメインの公園内にあります。私は成城学園前駅から東急バスで行きました。機関車は屋根などがない状態で保存されていますが、状態は悪くなく、雪国でのC57の活躍の姿をしのぶことができます。砧公園での散策と併せて見学すると良いでしょう。
【中野区】紅葉山公園 C11機関車
中野区には、中野駅から徒歩8分にある紅葉山公園に蒸気機関車が展示されています。こちらはC11 368機関車。現在東武鉄道で「SL大樹」として走っている蒸気機関車と同型です。このC11 368は昭和21年に製造され、最後は石巻線で活躍し、中野区にやってきたそうです。
アクセス | JR・東京メトロ「中野駅」から徒歩8分 |
展示機関車 | C11 368機関車 |
中野駅南口を出て左手に、線路沿いにまっすぐ進みます。「なかのZERO」の手前で曲がると見えてきます。屋根付きで保存状態がよく、じっくり見学できます。新橋駅のSL広場にある蒸気機関車も同じC11です。
【杉並区】杉並児童交通公園 D51機関車
杉並区の善福寺川沿いにある杉並児童交通公園には、D51 254機関車が展示されています。昭和14年に製造された車両で、主に関西や中国地方で活躍し、長門で廃車となったあと、杉並区にやってきました。屋根などはありませんが、非常に保存状態がよく、運転台などを見学できます。
アクセス | 京王井の頭線「浜田山駅」徒歩12分 |
展示機関車 | D51 254機関車 |
浜田山駅から歩くのは少し遠いので、私は吉祥寺駅から中野駅行きの関東バスで行きました。園内は完全に児童向けですが、善福寺川沿いがずっと緑地になっており、散策するのに最適です。
【品川区】東品川公園 西武鉄道7号機関車
品川区の東品川公園には、西武鉄道7号機関車が展示されています。こちらの蒸気機関車は、明治30年にアメリカのピッツバーグ社が製造し、阪鶴鉄道が購入したもので、国有化を経て西武鉄道に譲渡され、当時の川越線などで活躍した機関車です。これまで見てきた機関車は昭和に入ってから国内で製造されたものですが、こちらはそれらよりさらに古いもの。
アクセス | 京急「新馬場駅」から徒歩8分 |
展示機関車 | 西武鉄道7号機関車(国鉄2850形機関車) |
屋根などはないものの保存状態はよく、これだけ貴重なものを無料で誰でも観られるのは素晴らしいことです。京急線新馬場駅から南に徒歩8分。公園自体は閑静な住宅地の中にある普通の公園です。園内にはほかに、かつてフランス人技師により作られた「品川灯台」の模型もおかれており、見ものです。旧東海道品川宿の街並みとともに楽しむのがおすすめです。
【大田区】入新井西公園 C57機関車
大田区大森にある入新井西公園には、C57 66機関車が展示されています。このC57は昭和13年に製造され、主に九州で急行列車、普通列車用として活躍し、昭和48年に廃車になった後大田区にやってきました。「貴婦人」の愛称の通りスマートな見た目です。
公園は線路沿いにあり、頻繁に電車が行き交います。ちょうど東海道線の列車が通り抜けていきました。また、1日2回、SLの車輪を回転させ汽笛を鳴らすデモンストレーションが行われるそうです。
アクセス | 京浜東北線「大森駅」徒歩5分 |
展示機関車 | C57 66機関車 |
大森駅東口から商店街を抜けて徒歩すぐで、交通公園のような感じです。消防車も展示されています。車輪回転の時間ではありませんでしたが、隣を走る京浜東北線や東海道線の列車を眺めたりと楽しく過ごせました。
【大田区】萩中公園 東武鉄道34号機関車
大田区からもう一つ、羽田空港近くの京急線大鳥居駅から徒歩すぐにある萩中公園には、東武鉄道34号機関車が展示されています。34号機関車は大正3年にイギリスの「ベイヤー・ピーコック社」で製造され、当初から東武鉄道で活躍し、貨物列車の牽引に使われました。昭和41年に廃車となり、大田区にやってきました。
また、都電7000形も展示されています。この7008は平成24年まで運行し、平成25年に大田区に譲渡されたものです。内部も見学できます。
さらに、引退した軌道モーターカーも展示されています。軌道モーターカーとは、駅構内や工場内で入れ替え用に使う車両で、この車両は晩年大船工場で幕を閉じたようです。
アクセス | 京急線「大鳥居駅」から徒歩6分 |
展示機関車 | 東武鉄道34号機関車(東武鉄道B3形) |
車両は園内の「ガラクタ公園」にあり、入園時間は9時~17時。めずらしい私鉄のSLに都電車両に軌道モーターカーにと、大変見ごたえのある展示です。ちかくの羽田神社や糀谷商店街などと併せて観光すると良いでしょう。
【足立区】北鹿浜公園 C50機関車
足立区鹿浜にある北鹿浜公園には、C50 75機関車が展示されています。C50機関車は動態保存されているものはなく、またこのような展示も首都圏ではおそらくここだけ。昭和4年に製造され、昭和46年に廃車となり、足立区にやってきました。来歴はわかりませんが、旅客・貨物双方に使われ、晩年は入れ換え用として活躍したものと考えられます。
アクセス | 西新井駅、赤羽駅からバス |
展示機関車 | C50 75機関車 |
屋根付きで比較的状態はよく、また希少性の高い車両だと思われるので、一見の価値があるでしょう。児童向けの交通公園と野球場がメイン。消防車も展示されています。私は赤羽駅から国際興業バスに乗り、「鹿浜4丁目北」バス停から行きました。
【板橋区】城北交通公園 D51機関車/東武鉄道1号機関車
板橋区にある城北交通公園には、D51 513蒸気機関車が展示されています。都営三田線蓮根駅から徒歩すぐ。このD51 513は、昭和15年に製造され、主に貨物輸送用として信越線や北陸線で活躍後、最後は酒田機関区にて幕を閉じた車両です。北国を走る姿がしのばれます。
また、なんと東武鉄道1号機関車も展示されています。これはもともと和歌山県で使われていたものを東武鉄道が取得したものの、都市部では小さすぎて使い物にならず、東上線ときわ台駅に展示されていたものがこちらに移動し、展示されているのだということです。ドイツのアーサーコッペル社(Orenstein & Koppel OHG)製で、明治45年に製造されました。実際機体は驚くほど小さく、子どもを乗せて走る遊園地のSLのよう。歴史的価値もあり希少な車両で、塗装など丁寧に整備されており、一見の価値ありです。
また、無料で見学できる交通資料館も併設されています。模型や貴重な鉄道資料、写真などが豊富に展示されており、無料で見られるのが驚きなほど。SLと併せてじっくり1時間は見学しました。1日3回鉄道模型の運行もあります。開館時間は9時~16時。
アクセス | 都営三田線「蓮根」徒歩5分 |
展示機関車 | D51 513機関車 東武鉄道1号機関車(製造番号5885) |
安定のD51に貴重な東武鉄道1に交通資料館にと盛りだくさんな公園です。このほか、都営バスの車両も展示されていました。お子さん連れだけでなく大人の方でもじっくり楽しめるスポットです。赤羽駅などからバスでも行けます。
【葛飾区】上千葉砂原公園 D51機関車
葛飾区にある上千葉砂原公園には、D51 502機関車が展示されています。このD51は昭和16年に製造され、奈良機関区に配属されたあと、広島、新鶴見、新津、直江津と活躍の場を移し、最後は酒田機関区にて廃車となり、葛飾区にやってきました。
屋根付きで保存状態もよく、当時の雄姿がしのばれます。
この公園は交通公園となっているほか、なんと動物園も併設されており、ポニーの乗馬体験までできます。鳥類やリスザル、孔雀、ヤギ、ブタなどが飼われており、無料で見学できます。
アクセス | 亀有駅、綾瀬駅からバス |
展示機関車 | D51 502機関車 |
私は綾瀬駅から京成タウンバスで行きました。蒸気機関車を見学した後、動物園をじっくり楽しむことができました。23区内で無料でこれだけの動物が見学でき、ポニーの乗馬体験までできるというのはすごいですね。近隣住民の方以外もわざわざ訪れる価値のある公園です。
番外編
ほかに有名なSLスポットとして、新橋駅前のSL広場「C11 292号機」や、上野恩賜公園内にある国立科学博物館のSL「D51 231号機」などが挙げられます。
また、今回は各区にまんべんなく紹介したかったため載せませんでしたが、豊島区の大塚台公園や、大田区の東調布公園など、23区内にはまだまだ多くのSLが置かれた公園があります。ぜひSLを身近に感じてください。また、関東では秩父鉄道や東武鉄道など、実際に運転されているSLに乗ることができる路線もあるので、実際に乗ってみるのもおすすめです。
追記
2022年11月、豊洲にある芝浦工業大学附属中高にて、西武鉄道で活躍した蒸気機関車が展示されることになりました。見学は無料。都内に新たなSL展示スポットが誕生です。
アクセス | ゆりかもめ「新豊洲駅」徒歩1分 有楽町線「豊洲駅」徒歩10分 |
展示機関車 | 西武鉄道4号機関車(鉄道院403号機関車) |
23区内のSLスポット10公園をめぐった感想として、個人的に一番好きだったのは板橋区の城北交通公園。東武鉄道1が見られるのは貴重です。また公園全体の体験として、都電荒川線やJR線を高いところから見られる北区の飛鳥山公園や、無料の動物園併設の上千葉砂原公園はとても楽しいものでした。
23区内に限らなければ首都圏にはまだまだ数多くのSL設置箇所があるため、いろいろめぐってみようと思います。
コメント
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