東海道線・横須賀線の大船駅から江の島方面を結ぶ懸垂式のモノレールで、東京方面から江の島へ向かう際に鎌倉や藤沢を経由せずダイレクトに向かえる路線です。1970年に開業。全線が単線なものの高頻度で運行しています。正式には「湘南モノレール江ノ島線」といいます。
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江の島へのアクセス路線として観光需要が多いと思いきや、大半を通勤通学需要が占めるそうです。かねてより需要の大きい路線で、朝夕は大変混雑します。
また、丘陵地帯を高速度で運行することでも知られ、そのさまはジェットコースターのよう(公式ホームページでもそう謳われています)。アップダウンの激しい地形を高速度で進めるのはモノレールならでは。支柱の高さで高低差を調節できます。
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早速乗りに行きました。
大船駅に来ました。京浜東北線、横須賀線、東海道線が乗り入れる一大ターミナル駅です。そんなJRの駅ビルの西側に湘南モノレールの大船駅があります。
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少し待っていると列車が大船駅に向けてやってきました。高頻度で運転されています。
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今回は1日フリーきっぷを使用します。大人610円、子ども310円。往復するだけでお得になります。駅の券売機で簡単に買うことができます。「Enjoy 空中散歩」というキャッチフレーズが良いですね。券売機の隣には湘南モノレールグッズが展示されていました。
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ホームに入ります。大船駅は2面1線の構造で、乗車ホームと降車ホームとで分かれています。天井の軌道には車止めが。
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列車出発前には、頻繫に走っているにもかかわらず平日日中でもこのホームが満員になるほど混みあいます。右の1番線が乗車ホーム、左の2番線が降車ホームです。
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列車がやってきました。車両はすべて5000系。2004年にデビューしました。3両の固定編成です。
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急いで乗り込みます。立ち客が奥に詰めなければいけないほど混雑しています。加速の段階で既にスピードを出していて揺れながら大船駅を出発。バスターミナルを下に見ながらカーブしていきます。
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大船駅を出てすぐに左にカーブして南下する横須賀線と垂直に交差します。上下線のほかに引き上げ線があり、E235系が休んでいるのが見えました。
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続いて、かつての貨物線の廃線跡を通過します。これは、横須賀線の鎌倉方面から、かつてあったJR東日本の大船工場に向けて伸びていた引き込み線でした。すでに線路ははがされ、空き地が長く続いている状態です。大船工場の跡地は今後再開発される予定です。後で見に行きます。
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最初の停車駅、富士見町では早速多くの下車がありました。次の湘南町屋駅では、三菱電機の鎌倉製作所が見えます。この三菱電機の大船から湘南町屋までの通勤需要が大きく、ラッシュと逆方向にもラッシュがるというのが湘南モノレールの強みでしょう。三菱電機はかつては湘南モノレールの大株主で、建設にも深くかかわっています。沿線から大船に向かう通勤通学需要だけでなく、大船から沿線に向かう通勤需要もあるということです。
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富士見町、湘南町屋あたりがそうしたビジネスエリアの性格を持ち、この先湘南江の島まではどちらかというと住宅エリアと言えるでしょう。
次の湘南深沢駅で下車してみました。往復した体感として、大船〜湘南深沢間の需要が特に多いのではと感じました。湘南町屋あたりまでは立ち客も多いほど混んでいましたが、湘南深沢から先はガラガラになりました。
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先ほど見た引き込み線が向かう先の旧大船工場の跡地です。現在は一時的にサッカー場などとして使われていますが、今後は再開発される予定です。この工場跡地の先には柏尾川を挟んでJR東海道線が走っており、かつてはそこに広大な貨物ターミナル、湘南貨物駅がありました。その湘南貨物駅跡地付近に新駅を造る構想があり、この湘南深沢の跡地と合わせて一体的に開発する構想があります。
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ホームを見てみましょう。狭いホームに無駄のないベンチが。
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この湘南深沢駅は交換可能な1面2線の駅です。分岐のポイントと信号を見ておきます。このように交換可能な駅は多く、すべての交換可能駅で交換するという過密なダイヤが組まれています。そのためこれ以上本数を増やすことは構造上できないと思われます。
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再び乗車します。中央線のようなカラーリングの電車が来ました。それぞれカラーリングが異なるのが楽しいです。
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湘南深沢駅を出ると右手に車両基地があり、分岐していく軌道が見えます。湘南モノレールの本社もここにあります。夜間には電車はこの車両基地に引き上げます。
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快調に飛ばし、西鎌倉、片瀬山と停車していきます。このあたりは高級住宅街。次の目白山下から藤沢市に入ります。いよいよ江ノ島です。目白山下を出るとすぐにトンネルに入ります。モノレールのトンネルは東京モノレールでは都市トンネルがありますが、こうした山を貫くトンネルはめずらしいものです。
空いてきたので車内を見てみましょう。連結部分では、車両と車両の移動はできません。
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片瀬山のトンネルを抜けるとすぐに湘南江の島駅に到着。終点の湘南江の島駅で誰もいなくなったので車内を撮影します。座席はすべてボックスシートで、端の方は一人がけのシートもあります。座席は結構ゆったりとしていて快適です。
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終点の湘南江の島駅で下車します。ここまで来ると乗客はまばら。
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湘南江の島駅は、大船駅と同じく乗車ホームと降車ホームが分かれた2面1線のホームです。ここでは夜間停泊もするそうです。
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改札を出るとルーフテラスが。江ノ島を一望できます。富士山も見えるそう。素敵な空間です。
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この日は霞んで見えず。駅の高さを活かした素晴らしいスペースです。駅の価値が上がります。
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駅は5階建てで、ホームも5階。懸垂式モノレールは高低差をものともしません。このあたりの地名は片瀬。
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間の階には病院などが入っており、湘南モノレールの歴史を紹介するパネルの展示もありました。
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徒歩10分ぐらいで江ノ島へ。湘南江の島駅のすぐ近くに江ノ電の江ノ島駅があります。駅前のすばな通りを抜けるとすぐ江ノ島です。
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この日は風がとても強く、散策は断念しました。
ちなみに、大船から江ノ島の島の中まで行く京急バスが何往復かしていて、モノレールと全く同じ道を進みます。というか、モノレールが作られた道路はもともと京急専用の私道でした。いまでも江ノ島へのバスが残っているというわけです。京急バスは鎌倉から江ノ島への路線も有していますが、こちらはかなり本数が少なめです。
さらに、江ノ電バスも同様に大船〜江ノ島間の路線を持ち、競合しています。こちらはモノレール下は通らず、腰越大船線を江ノ島まで進むルートです。毎時1〜2本コンスタントに便があります。
再びモノレールに乗って帰ります。今度は赤いラッピング。
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ガラガラだったので前面展望しながら帰ります。片瀬山を抜けるとモノレールは高さを維持しながら進みます。
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片瀬山駅の手前では地形が高くなるのでモノレールは低くなります。道路と同じような高さの専用道を進みます。
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片瀬山駅を出ると再び高い位置になります。この地形のアップダウンの上を高速で揺れながら進むので、本当にジェットコースターのよう。支柱の高さを変えることで、地形の高低差にかかわらず平行に進めます。
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途中の西鎌倉駅で下車してみます。このように離合可能な駅では必ず離合。
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以前経済紙で特集されていた地元のスーパー「スズキヤ」に寄りたくて降りました。「鎌倉山納豆」を購入。モノレールが走る街、素敵です。
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再び列車に乗り込みます。やはり次の湘南深沢で混み始め、満員で大船に戻りました。最後に大船の観音様を眺めます。
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湘南モノレールが江ノ島へのアクセス路線であることは間違いないですが、やはり第一に地元の人のための路線で、さらに沿線への通勤需要も大きい路線だということが肌でわかりました。
江ノ島観光にもすごく便利ですが、新宿から一本で行ける小田急や、世界的に知名度の高い江ノ電と比べて、そもそもあまり認知されていないものと思いました。
湘南モノレールはジェットコースターのようで乗っていること自体が観光になるような路線なので、特に子ども連れの方は喜ばせられると思います。行きはロマンスカーで江ノ島へ、帰りはモノレールを楽しんでから大船から湘南新宿ラインで帰宅、などと組み合わせれば旅がさらに楽しくなりそう。
ぜひ乗ってみてください。