JR東日本が運行する臨時の特急「鎌倉」号は、2024年3月16日のダイヤ改正より、使用車両をE257系からE653系に変更しました。
特急鎌倉は土休日を中心に、武蔵野線の吉川美南駅から貨物線である武蔵野南線を通り、横浜駅を経由して横須賀線の鎌倉駅まで運転される臨時列車です。かつては臨時快速列車「ホリデー快速鎌倉」として運転されていましたが、2022年に特急に格上げされました。
ホリデー快速鎌倉時代の乗車記はこちら
特急に格上げされE257系5両編成で運行されていた時の乗車記はこちら
今回のダイヤ改正で使用車両がE653系7両編成に変更されました。全車普通席であったE257系5500番台と異なり、新たに投入されたE653系はグリーン車を連結した7両編成。E653系のグリーン車は1+2列の豪華仕様。お出かけ用の特急である特急鎌倉にも最適な設備です。
なお、紫陽花のシーズンである6月の平日に設定されている特急「鎌倉(平日おさんぽ号)」もE653系で運行されます。
https://www.jreast.co.jp/press/2023/20240119_ho02.pdf
また、特急鎌倉にえきねっとでの「在来線チケットレス特急券(トク割)」が設定されました。割引率は、普通車指定席特急料金(通常期)から35%割引となります。例として、武蔵浦和~西国分寺から鎌倉まで普通車指定席の特急料金が960円になります。
E653系への置き換えの目的として、多くの線区で活躍できるE257系の波動用編成を土休日に確保する意味合いがあるのではないかと予想されています。これは、2023年のダイヤ改正より特急「草津・四万」や特急「あかぎ」にE257系が使われるようになったことや、房総特急において255系が引退し、E257系の需要が増したことが理由です。
E653系の車高では中央線の高尾以西には入れず、また6両までしか対応していない南武線や、あしかがフラワーパークへの臨時列車にも対応できませんが、武蔵野線の有効長8両編成には対応していますし、鎌倉駅、北鎌倉駅とも乗り入れ可能であることから、特急鎌倉での固定運用に最適であったと言えます。また、7両編成化により輸送力は約1.5倍になるそうです。これは、特急鎌倉が定着し、成功している証左とも言えそうです。
今回湘南方面に行く機会がありましたので、早速乗ってみることに。今回は復路の列車に鎌倉駅から新秋津駅まで乗車していきます。無事チケットレス35%OFFで予約できました。日によっては35%OFFは売り切れるので早めの予約を。
北鎌倉駅で見かけた在来線チケットレス特急券に関するポスターにも、しっかり特急「鎌倉」が載っていました。しかも、ちゃんとカラーリングも使用車両のものです。このそうそうたる首都圏在来線特急の中に鎌倉が入っていることがなんだか感慨深く感じます。
往路の運用が鎌倉で終わった後、車両は一旦逗子まで進み、大船に戻って大船と北鎌倉との間にある留置線で過ごします。その後、復路の運用が近づくと、構造上、直では鎌倉方面に行けないため、車両はまずは大船駅に入ります。15:57ごろ大船駅の横須賀線8番ホームに入線してきました。水色塗装のK71編成です。座席も往路の向きのままなので、大船で車内清掃等をするのでしょう。私は先に鎌倉へ向かいました。
混みあう鎌倉駅に到着です。土休日限定の「のんびりホリデーSuicaパス」を使用しているのでそのまま特急「鎌倉」で折り返すことに。
しばらくすると、鎌倉駅下りホームに特急「鎌倉」の車両が入線してきました。車両は再び一度逗子まで回送してから、進行方向を変えて上り線に入線します。E653系になってからまだ一か月のため、このエリアでは珍しいこの車両に驚きの声を上げる方が多数いました。
特急「鎌倉」の乗車位置はピンク色で「臨時特急7両編成」と表示されています。
ですが、以前のE257系5両編成での運行の時の乗車位置もまだ残されています。また、「鎌倉」とは明示されていないため、戸惑う方を見かけました。現状では両数だけで見分けることになります。ただ全車指定ですから特段並ぶ必要もなく、大きな問題ではありません。5両が残されているということは、E257系が代理で入ることも想定されているということなのかもしれません。
E257系の乗車位置の近くにE653系の停止位置があるなど、鎌倉駅は意外と複雑な状況になっています。
さらに成田エクスプレスの停止位置も残っていました。現在は鎌倉への延長運転はしていません。
16:19発横須賀線千葉行きのあと、16:24発、特急「鎌倉」吉川美南行きが入線してきました。最後尾の車両はグリーン車です。
デッキからグリーン車を覗いてみました。2列-1列の配列で、各座席の前後はパーティションで区切られています。また、ラウンジスペースのような部分が手前にありました。この豪華なグリーン車を連結したE653系列車は、ほかに特急「いなほ」や「しらゆき」で運用されています。
いよいよ出発です。鎌倉駅出発時点では私の車両の埋まり具合は3割ほど。
かつて常磐線特急として通勤需要を担っていたこのE653系の車内は、機能的で落ち着いた雰囲気です。シンプルで無駄のないデザインと言えます。特急「いなほ」ではヘッドカバーは布製の黄色の明るいものですが、こちらはよりシンプルな感じ。
E653系の座席の特徴として、背面のほかに座面もスライドすることが挙げられます。そのため包み込まれるような感覚でゆったりと座ることができます。普通車でもこのような座席なのはよいですね。好みはありますが、この点でもE257系よりサービスアップしたと言えるでしょう。
かつて設置されていたチケットホルダーや、「Tickets」と書かれていたシールは剥がされていました。
鎌倉を出るとすぐに北鎌倉に停車します。こちらも鎌倉観光において主要な駅で、この車両にも数名の方が乗ってこられました。
北鎌倉を出ると東海道線と合流する大船駅に入ります。この列車は大船駅は通過します。奥に大船の大仏様が見えました。この乗車率であれば大船駅に停車してもいいのにと思いました。
大船駅を過ぎても横須賀線の線路を進みます。大船行きの成田エクスプレスとすれ違いました。もともと横浜駅発着だった成田エクスプレスの大船駅までの延長運転は、1993年に始まりました。ウイングエクスプレスが運行されていた時代です。その後2004年に臨時列車として小田原駅までの延長運転が始まり、また2014年にこちらも臨時列車として横須賀までの延長運転が始まりました。
これまで横須賀線を走ってきましたが、戸塚駅の手前で東海道線に転線します。特急「鎌倉」のこの区間は、本数の多い横須賀線や東海道線の合間を縫って走るため、あまりスピードは出ません。
北鎌倉を出て次の停車駅、横浜に到着です。横浜でも数名が私の乗っている車両に乗車してきました。武蔵野線沿線と横浜を一本で結んでいるため、横浜からの利用も多い印象です。私も武蔵野線沿線から横浜まで利用したことがあります。
横浜を出ると次は西国分寺まで停まりません。37分間無停車です。列車は鶴見駅の手前で、東海道線から東海道貨物線に転線します。東海道貨物線はJR・相鉄直通線が使用している線路です。地下から上がってきます。奥には京急線の車両が見えました。
鶴見駅では機関車の停車していました。新鶴見機関区へと戻るところでしょうか。
鶴見駅の構内で運転停車します。ホームのない線路上です。ここで乗務員さんが交代します。
鶴見駅を出ると、すぐに鶴見川を渡ります。この先で武蔵野線(武蔵野南線、武蔵野貨物線)に入ります。横須賀線や湘南新宿ラインが走る品鶴線とは別の線路で、JR・相鉄直通線や特急「湘南」の一部が走る線路です。
跨線橋で東海道線を渡り、新鶴見機関区方面に進みます。武蔵野線は営業列車としては府中本町駅までですが、実際にはその先も鶴見駅まで線路が繋がっており、武蔵野南線や武蔵野貨物線などと呼ばれます。その貨物列車用の線路をこれから進みます。
進行方向右手上には横須賀線の高架が合流してきました。
新鶴見機関区が見えてきました。多くの電気機関車やディーゼル機関車が在籍しています。列車はその外側をぐるりと回るようにして進みます。奥には武蔵小杉のビル群が見えました。
燃油を積む貨車を連結した貨物列車が出発を待っています。
新鶴見機関区を過ぎると、武蔵小杉駅の方には行かず、直進して地下に入ります。ここから梶ヶ谷貨物ターミナルまで長い長い地下区間です。
普段は貨物列車専用のため、電波も入りません。暗いトンネルの中を快走していきます。途中貨物列車とすれ違いました。この区間を乗ることができるのは特急「鎌倉」だけ。このためだけでも乗る価値があります。
地上に出ました。川崎市宮前区梶ヶ谷にある貨物駅、梶ヶ谷貨物ターミナルの横を通ります。
電気機関車が一台停まっていました。奥には白い建屋と巨大なクレーンが伸びています。あれは、リニア中央新幹線の資材搬入口と非常口にあたります。リニア中央新幹線はこの梶ヶ谷貨物ターミナル駅直下を通り、品川駅と橋本駅(神奈川県駅)を結びます。手前にあるコンテナは、恐らくリニア中央新幹線を掘削する際に出た残土を運ぶためのものです。残土の運搬は一部は貨物列車で行われています。
梶ヶ谷を出ると再びトンネルに入ります。運行本数の少ない武蔵野貨物線では特急「鎌倉」もスピードを出して走ります。心地よいスピードと、暗さと、スマホが使えないことで、だんだん眠くなってきます。
再び唐突に地上に出ました。ここは東京都稲城市。眼下に京王相模原線の稲城駅が見えます。京王相模原線から見える高架線はこの武蔵野貨物線なのです。駅のホームから特急「鎌倉」を見つめる方がこちらからも見えました。
再びトンネルに入り、今度は多摩川の手前で地上に出ます。隣には南武線の線路が合流してきます。
府中本町を通過します。府中本町駅の武蔵野線ホームは、本線から分岐してホームに入る行き止まり式の構造になっているため、構造上鶴見方からホームに入ることはできません。南武線では本線上にホームがあるため臨時列車も停車していましたが、ホームドア設置以降は臨時列車は通過になっているようです。
北府中も通過し、いよいよ西国分寺に到着です。西国分寺で数名が下車されました。中央線が速くて便利な西国分寺からでも横浜、鎌倉方面へはこの特急「鎌倉」利用が一番速いです。
隣の号車がガラガラだったので、車内を撮影。
次の新小平を通過し、次の停車駅は西武池袋線との乗り換え駅である新秋津です。この先、東武東上線に乗り換えられる北朝霞、埼京線と乗り換えられる武蔵浦和、そして終点の吉川美南に停まります。私は新秋津で下車しました。
新秋津駅の特急「鎌倉」の乗車位置案内には、「E653」と表記してありました。また、列車の色と同じ青色で表されているほか、「青」とも書かれており、鎌倉駅での案内よりずっとわかりやすくなっています。
E257系の方も同様で、色も車両と同じ緑になっています。駅により異なるのがおもしろいですね。
よりグレードアップした特急「鎌倉」ですが、お手頃な割引も設定されており、時間が合えば有力な選択肢となりそうです。私の乗った指定席の号車は半数以上空きがありましたが、グリーン車は人気でかなり埋まっているようでした。
行楽目的の方が大半ですが、素晴らしいグリーン車を気軽に体験できる列車としても使われているようで、今後も人気が続くといいなと思いました。
ぜひ乗ってみてください。