東京駅から新宿駅、立川駅を経由して八王子駅まで向かう中央線の特急「はちおうじ号」に全区間乗車しました。東京都内で完結する特急列車です。
特急「はちおうじ号」とは
特急はちおうじ号は通勤ライナーの性格が強く、平日朝に八王子から東京へ向かう便が2本、平日夕方から夜に東京から八王子に戻る便が4本運行されています。土休日の運転はありません。ほかに、立川駅から青梅線に入り青梅駅まで向かう特急「おうめ号」もあります。併結されるのではなく、別々の列車として走っています。特急「おうめ号」は朝に1本、夕方から夜に2本運転されています。
もともと中央線には通勤ライナーとして「中央ライナー」、「青梅ライナー」が特急型車両で走っており、2019年に特急に格上げされたのがこのはちおうじ号です。
中央線には特急「あずさ号」、「かいじ号」が頻繁に走っていますが、あずさ、かいじはもともと乗客が多く、朝夕のラッシュ時に遠近分離を図る形でこうした近距離特急(ライナー列車)が設定されています。東海道線の特急「湘南」号などにも同様の形態が見られます。
使用車両はあづさ、かいじと同じE353系の12両編成。停車駅は東京、新宿、立川、八王子のみです。
運行系統 | 特急「はちおうじ」東京 – 新宿 – 立川 – 八王子 特急「おうめ」東京 – 新宿 – 立川 – 拝島 – 河辺 – 青梅 |
東京〜八王子の全区間で50キロに満たないため、指定席はどの区間でも760円。グリーン車は1,280円。えきねっとのチケットレス割引で指定席が660円になります。
こうした列車は着席通勤に重点が置かれているため、必ずしも速く着くわけではありません。しかし、大変な混雑をみせる中央線のラッシュ時に快適なリクライニングシートに660円で座って通勤通学できるというのは大きなメリットです。東京~立川間ははちおうじ、おうめ号合わせて朝に3本、夜に6本あり、充分な座席量が供給されています。
はちおうじは満席になることが多く、乗車することが事前にわかってる場合は早めに予約しておくと良いでしょう。
実際に乗車してみた
まずはえきねっとで予約します。18:00発のはちおうじ1号に乗車します。東京から八王子までの所要時間は55分。前日に予約したらまだ窓側が空いていました。
無事チケットレス割引で100円引きで予約できました。
早速乗っていきましょう。東京駅の中央線ホームにやってきました。はちおうじ1号は2番線からの発車です。先に発車するのは17:51発の通勤快速大月行き。
東京駅での乗車位置案内は「特急」とだけ表示されています。はちおうじに乗車される方は多く、すでに行列が。
通勤快速が出る前に東京駅の手前まではちおうじ号の車両がやってきているのが見えてました。この時間の中央線ホームは超過密。電車が出てすぐ次の電車が入ってきます。この車両もその過密ダイヤの合間を縫うように回送されてきました。
特急はちおうじ1号に乗車です。行き先は「立川・八王子」行きと表示されます。
早速乗り込みます。
E353系は前面にコンセント完備。
フリーWi-Fiも設置されています。帰宅しながら作業が可能です。
中央線の特急は全席指定ですが、満席の場合や、乗車したい列車が確定していなかった場合は座席未指定券で乗ることもできます。その際は座席の頭上のランプが赤の場合は空席なので座ることができます。黄色に変わると、次の駅でその席を指定した人が乗ってくるので譲りましょう。基本的には座席指定をするのがおすすめです。
定刻に東京駅を出発です。私の号車も窓側はすべて埋まり、通路側もちらほら埋まるような混雑度。
同じく18:00に出発した山形新幹線つばさ153号、東北新幹線やまびこ153号の併結と並走します。神田駅まで並んで走りました。
混雑する神田駅を華麗に通過します。
旧万世橋駅ホームを過ぎ、総武線の神田川橋梁が見えてくると、まもなく御茶ノ水駅です。
御茶ノ水から水道橋まで中央総武線各駅停車と並走しました。前の快速との間隔が詰まっているため、この特急もゆっくりと走ります。
次の停車駅、新宿に到着です。10番線に停車します。引き上げ線には出発を待つE353系が。
特急湘南号もいました。18:25発の小田原行きです。新宿発は平日に2本運転されています。渋谷、大崎と停まった後は横浜駅を通過して藤沢まで停まりません。観光特急としての踊り子号、サフィール踊り子号と通勤ライナーとしての湘南号で役割が分かれており、さらに湘南号は横浜を通過することでさらに先までの乗客が乗りやすくなるよう遠近分離が図られています。
新宿から数人が乗車して出発です。東京駅での乗車が圧倒的に多かったのが印象的でした。新宿からはあずさ、かいじ号が頻繫に出るほか、後述する「京王ライナー」や「拝島ライナー」なども出ているためかもしれません。
高架区間に入ると大変眺めがよくなり、暮れゆく空を眺めながら電車は進みます。車内からは時折缶ビールを開ける音が聞こえます。新宿を出てもスピードは出せず、のろのろと進んでいました。
前の通勤快速は先に行かせたまま、三鷹駅で先行の快速青梅行きを追い越します。三鷹駅を出るとすぐに三鷹跨線橋を通過します。太宰治が好んだ跨線橋です。
徐々に日が暮れて暗くなっていきます。国分寺で再び先行の快速高尾行きを追い越しました。国分寺を出ると急にスピードを上げ始め、特急本来の走りを見せました。
前を走る快速青梅行きを隣のホームに退避させて、立川駅に到着です。6番線に入ります。3割ぐらいの人が降りていきました。ライナーではなく特急なので乗車も可能ですが、もちろん乗ってくる人はいません。快速青梅行きは特急が出ないと青梅短絡線に入れないため出発できません。青梅線方面に行く人は対面ですぐに乗り換えが可能になっています。
夜の多摩川を渡ります。すぐ前を走る例の通勤快速大月行きが遅れているため、この列車もゆっくり進みます。立川~八王子間で211系の普通列車立川行き、E231系の武蔵野線直通の各駅停車「むさしの号」と連続で珍しい列車にすれ違いました。
いよいよ終点の八王子駅に2分遅れで到着です。約一時間の中央線特急の旅でした。八王子駅では例の通勤快速大月行きと対面で接続します。その先に行く人は八王子で乗り換えられるようになっています。何人もの客がはちおうじ号から通勤快速に乗り換えていきました。
はちおうじ号は回送となり、引き上げていきました。
東京から八王子まで全区間乗車する人が多かったことが印象的でした。やはり日常的に乗っていると思われる人が多く、落ち着いた車内でした。
新宿-八王子間は「京王ライナー」/新宿-拝島間は「拝島ライナー」も
特急はちおうじを利用する際に併せて検討したいのが、並行して走る京王線の着席通勤ライナー「京王ライナー」です。京王ライナーは新宿駅から京王八王子駅まで7本も運転され、料金も410円と割安です。所要時間も新宿〜京王八王子間で36〜42分。
京王ライナーに全区間乗車した記録はこちら
新宿から八王子方面であれば本数も多い京王ライナーが良いかもしれません。
また、中央線に並行する路線として西武新宿線も挙げられます。西武新宿線にはこちらも着席通勤ライナーとして、西武新宿~拝島間に「拝島ライナー」が運行されています。拝島ライナーの指定料金は400円と割安です。
拝島ライナーに全区間乗車した記録はこちら。
青梅線方面の方は一気に拝島まで出られるので便利です。併せて検討してみてください。
中央線快速にグリーン車も登場
2024年度以降には、中央線快速にグリーン車が連結されます。これは湘南新宿ラインや上野東京ライン、横須賀線など他の主要路線ですでに導入されているグリーン車が中央線快速にも導入されるもので、数年間のホーム拡張工事を経ていよいよスタートします。現在は10両編成が使われていますが、これにグリーン車2両が併結された12両編成として運行されます。すでにグリーン車を併結した編成が試運転している姿なども見られています。
これにより、着席通勤の供給量が大幅に増え、中央線沿線の利用者にさらに便利になるでしょう。普通列車グリーン車のグリーン料金は平日50キロ以内で780円ですから、現状でははちおうじ、おうめ号の方がやや割安ということになります。中央線快速は中野以降、遠くは山梨県の大月まで各駅に停まりますから、速達型に加えて各停型にも着席通勤が可能になる、といった形になります。今後が楽しみですね。