東京都の拝島駅から武蔵五日市駅を結ぶ路線、五日市線に全線乗車しました。
五日市線とは
車両は中央線で使われるオレンジのカラーリングをまとったE233系の6両編成。2022年までは中央線に乗り入れて新宿、東京まで直通していましたが、現在は拝島止まりの列車か青梅線に乗り入れて立川までの列車のみ運行されています。また、2022年までは土休日に「ホリデー快速あきかわ」が運行されていました。
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もともと五日市線は1925年に私鉄の五日市鉄道として開業し、立川から拝島を経て五日市までを結んでいました。立川~拝島間は青梅線(当時は青梅鉄道)と隣り合った場所を走っていましたが、その後国有化され、重複区間でより遠回りだった五日市線の方が廃止され、拝島~武蔵五日市間の路線に短縮されました。
なお、廃線跡は青梅短絡線(中央線上り線から青梅線に入るための短絡線)として使われているほか、拝島駅付近で「五鉄通り」として残っています。
五鉄通りは拝島駅南口の南側から始まり、新奥多摩街道まで比較的長く残されています。その拝島駅側には「五日市鉄道の線路跡」を紹介した案内板も設置されていました。
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このように廃線跡が道になっています。かつてはここに単線の線路が敷かれ、蒸気機関車やガソリンカーが走っていました。
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五日市鉄道には貨物線も敷かれ、多摩川の砂利輸送を行っていました。五日市鉄道は日中戦争時に南武鉄道(現在のJR南武線)と合併し、その後国有化されます。
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青梅短絡線乗車記
今回はまず立川から西立川までの青梅短絡線を見た後、拝島から武蔵五日市まで五日市線に乗車してていこうと思います。
中央線・青梅線直通の下り列車が発着する立川駅6番ホームにやってきました。駅名標の行き先が分かれてり、「西立川」が青梅線方面です。
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信号機の「下本短出(下り本線青梅短絡線出発)」と書かれている方が、短絡線方面の出発信号です。次の列車は中央線の特急のため、「下本中出(下り本線中央線出発)」に青信号が点いています。
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松本行きのあずさ号が停車し、出発していきました。次はいよいよ新宿発青梅行きの快速列車です。
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乗り込みます。ポイントが切り替えられ、「下本短出」に青信号が点きました。
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写真中央の左に分かれていく線路が青梅短絡線で、まっすぐ進む線路が中央線です。一番左手の線路は南武線に繋がっており、形状からも南武線に繋がるのが本来青梅短絡線の本線であるとわかります。また、右手の5番ホームからも青梅短絡線に接続しています。
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南武線と青梅線の直通列車は旅客列車はありませんが、貨物列車がこの青梅短絡線を使用して運行しています。横田基地への貨物列車、通称「米タン」もこの青梅短絡線を使用します。臨時列車では特急「あたみ」が青梅線と南武線を直通運転します。熱海方面の列車は青梅短絡線を逆走する形になります。
列車は中央線と立体交差するために勾配を登り始めます。青梅短絡線は単線です。
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登りきると徐々に右に曲がり、中央線と垂直に交わる形になります。
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中央線と立体交差します。隣を走るのは立川南通り。
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列車は住宅街の裏を抜けるようにしてゆっくりと進みます。途中、踏切もあります。
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青梅短絡線は西立川駅のすぐ手前で青梅線と合流します。ホームの始まるまさにすぐ手前です。
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ただ列車に乗っているだけだとあまり気づきませんが、窓の外を注意してみてみると青梅短絡線はとても面白い区間です。ぜひ青梅線直通列車に乗る際は注意して見てみてください。
五日市線乗車記
青梅線で拝島駅に着きました。青梅線のほかに、五日市線、八高線と西武拝島線が乗り入れるターミナル駅です。
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いよいよ五日市線に乗車します。今回乗車するのは拝島始発の武蔵五日市行き。6両編成での運転です。たったの17分で武蔵五日市に到着します。
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五日市線は全線が単線で、最高速度は85キロ。途中の3駅で交換可能です。車両のドアはボタン式。この辺りでは青梅線や八高線、中央線の高尾以西もボタン式の開閉です。
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五日市線のホームの昭島よりには五日市線0キロポストが建っています。よく見ると「開業大正十四年四月二十一日」と書かれています。
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早速乗り込みます。五日市線は日中でも結構な乗車率で、登山客もいました。
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拝島駅を出るとすぐに青梅線、八高線と分かれ、左に曲がります。
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新奥多摩街道と交差する手前で熊川に停車します。熊川のみ福生市で、それ以降の駅はあきる野市にあります。拝島駅は昭島市にあります。
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熊川を出ると高い位置を走るようになるため、見晴らしがよくなります。
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多摩川と垂直に交差します。河川敷は森のよう。
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多摩川はこのあたりでは川幅は広くありませんが、河川敷はとても広くとられています。
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多摩川を渡りきると、ほぼ直線で進みます。東秋留駅に停車です。
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秋川駅に到着しました。あきる野市の中心の駅で、近くに市役所があります。また、東京サマーランドの最寄り駅です。
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秋川を出ると、畑地が広がります。
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奥には東京サマーランドの観覧車が見えました。次の武蔵引田駅はこのあたりの巨大商業施設、イオンモール日の出の最寄り駅です。
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武蔵増戸駅を出ると、次は終点の武蔵五日市駅。
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武蔵五日市の手前では、五日市線は山に沿うようにして山際の高い位置を走るようになります。進行方向左手の景色が一段と良くなりました。
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秋川街道と交差する手前で、左に分かれていく線路が見えました。ここは、かつてあった三内信号所の跡地です。
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かつてここから、日の出町の岩井というところまで、岩井支線というのが伸びており、列車はここでスイッチバックして武蔵岩井駅に向かっていました。岩井支線廃止後、武蔵五日市駅までを高架化する際に岩井支線跡地を利用したため、本線であった一部が残されたのがこの写真の線路で、現在は保線用車両の留置に使われています。
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廃止された岩井支線の終点、武蔵岩井駅跡地はこちら。かなり北の方に位置しています。
その高架化された線路を大きく左にカーブしながら武蔵五日市駅に入っていきます。秋川街道と立体交差します。
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終点の武蔵五日市駅に到着しました。武蔵五日市駅は1面2線の構造で、頭端式ではなく中間駅の構造で建設されました。これはかつて、この先の檜原村への延伸要望があったためです。日中は基本的に2番線を使用しているようです。
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駅舎は新しく清潔で、レジャー要素が強め。秋川渓谷への窓口であることをPRしています。
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駅は2016年にリニューアル工事がされたばかり。多摩産の木材がふんだんに用いられています。
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駅前にはバスロータリーが広がり、このエリアのバスの拠点となっています。西東京バスが発着しています。なんと、最近運行を始めたばかりの電気バスが休んでいました。
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五日市の街をしばし散策します。
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電気バスに乗ってみたいとも思いましたが、予定があるので再び五日市線に乗車します。待っていると電車が山際に沿って走ってきました。
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かつての五日市鉄道の範囲と比べると現在の五日市線は短くなってしまいましたが、その歴史を感じられる場所が随所にあり、現在でも沿線の人々に愛されている鉄道なのだなとわかりました。
五日市線は都内にあり、かつ中央線と同じ電車でありながら、ローカル線の風情が楽しめる路線です。五日市線に乗りに行かれる際はぜひ青梅短絡線や「五鉄通り」も通ってみてください。