東武鉄道の東武大師線に乗車しました。
大師線とは
東武大師線とは、東京都足立区内を走る1キロの路線で、東武伊勢崎線の西新井駅と大師前駅とを結ぶ路線です。全線が単線で、途中駅はありません。西新井大師への参詣客輸送を担っています。所要時間はたったの2分。
特徴として、踏切が1つもないことや、大師前駅に改札や券売機が設置されていないことが挙げられます。大師線の改札は西新井駅で行われます。また、大師前駅から乗車した人は西新井駅で清算するか、その先のきっぷを購入します。
大師線はもともと、東武線の本線系統(伊勢崎線など)と東武東上線とを連絡する路線として計画され、その一部として開業したものです。その連絡線は「西板線」と呼ばれ、西新井駅と上板橋駅とを結ぶ予定でした。
早速乗っていきましょう。西新井駅から乗車します。「←大師線のりば」と案内があります。
改札に入り大師線のある左に行くとすぐにまた改札があります。これが大師前駅の分の改札です。ここで出場する形になります。ひと駅しかないため可能な構造です。その奥の左手に券売機があり、大師前駅から来た人できっぷを買う人はここで買います。大師前駅ではきっぷの販売もありません。
大師線の車両は東武8000系2両編成。ワンマン運転で、1本の編成でピストン輸送しています。車両は東武亀戸線と共通で、亀戸線で朝ラッシュを走った車両が回送で西新井駅にやってきて大師線に入る、といった運用もあるようです。電車の色は全部で4種類あります。今回乗車するのは緑色の編成。
日中は10分間隔の高頻度運転。23区内で8000系のようなレトロな車両に乗れるのは良いですね。
前面展望を楽しむことにしました。「大」の信号が点き、出発です。
環七通りのオーバーパスをくぐると、すぐに左手に曲がり伊勢崎線と分岐します。
高架線に入り、尾竹橋通りと交差。単線をコトコト進みます。
続いて七曲りと呼ばれる道と交差します。すぐに大師前駅が見えてきました。
終点の大師前駅に到着です。
大師前駅は1面1線の高架駅ですが、1面2線の島式ホームにする余地が残されています。ドーム屋根が美しい駅ですね。
大師前駅は3階建ての構造で、ホームは3階にあります。階段を降りて進みます。
東京都区内ですが、大師前駅はなんと無人駅。前述の通り改札はなく、自由に行き来できます。
出入り口は2か所あります。駅に改札を設置しない例は全国的にも珍しく、ほかに名鉄築港線などが挙げられます。
お正月などの多客期に使われる出札窓口がありました。
大師前駅構内には東武バスセントラル西新井営業所が入っています。スカイツリーシャトルなどもここに所属しています。
西新井大師は歩いてすぐです。
短い乗車でしたが珍しい体験ができました。ぜひ乗って特殊な改札を体験してみてください。
未成線「西板線」とは
1920年に東武鉄道と東上鉄道が合併し、両路線を繋ぐ路線の必要性から西板線が計画されました。西板線は東武伊勢崎線の西新井駅と東武東上線の上板橋駅を結ぶ計画で、途中に大師前、鹿浜、神谷、板橋上宿の各駅(いずれも仮称)を置く予定でした。ちょうど現在の環七通りに沿っており、各社の路線バスが頻度に運行されている区間です。そのため開通していれば大変需要の高い路線であったと考えられています。
路線開設の免許申請の翌年、関東大震災が発生し復旧に追われることになり、免許が下りてからも東武鉄道は新規路線開設どころではなくなりました。1931年に西新井駅~大師前駅間が西板線として開業しましたが、荒川放水路の護岸整備の関係など諸々の問題もあり、さらに、沿線が都市化していく中での建設費高騰により、その他の区間は断念されます。大師前駅までの西板線は戦後に一時休止された後、1947年に大師線として再開、現在に至ります。
西板線の目的として、本線系統と東上線系統間の車両の転属や検査などでの移動がありますが、完成しなかったため、現在でも、秩父鉄道線を経由する回送ルートが使われています。
「西板線」をバスで辿った記録はこちら。