TOYOTAが開発した水素で走る次世代型のバス、燃料電池バス「SORA」は現在、大手バス会社各社で続々と導入されています。首都圏に限ると、都営バス、東急バス、京王バス、京急バス、京成バス、JRバス関東、日立自動車交通、横浜市営バス、西武バス、東武バスウエストの計9社が運行中です。
TOYOTA燃料電池バス「SORA」
現在首都圏を走っている燃料電池バスSORAを乗りつぶししています。今回は京王バスの燃料電池バスに乗車しました。
新路線「050系統」とは
京王バスでは昨年2021年から新路線「052系統」として、「渋谷駅~新宿駅~大手町~新橋駅」を燃料電池バスにて運行していました。
京王バスの燃料電池バスは、もともと多摩営業所にて2台導入され、多摩センター駅や聖蹟桜ヶ丘駅を中心に多摩地区で活躍していましたが、その後永福町営業所に移り、「052系統」専属となっていました。
2022年9月の「バスターミナル東京八重洲」開業により、延伸して乗り入れるとともに系統名を変更。「050系統」として「渋谷駅~新宿駅~大手町~バスターミナル東京八重洲/バスターミナル東京八重洲〜~新橋駅〜新宿駅〜渋谷駅」を運行しています。
運賃は変わらず、大人210円(IC 210円)、子ども110円(IC 105円)の均一運賃。引き続き、永福町営業所所属の燃料電池バスで運行されます。
渋谷駅の停留所は西口バスターミナルの2番のりば。運行経路は渋谷駅を出て北上し、代々木公園駅、参宮橋駅、新宿住友ビル、新宿センタービルなどを経由して新宿駅西口に停車。小田急百貨店前の停留所に停車します。「宿51」系統と同じルートです(渋谷駅と新宿駅でのバス停位置は異なります)。
新宿駅西口以東は往路と復路で経路が違い、急行運転となります。往路は新宿御苑、四谷一丁目に停車後、皇居の北側をぐるっと回って大手町グランキューブ前に停車。永代通りから八重洲口に出て、「バスターミナル東京八重洲」に入ります。復路は「バスターミナル東京八重洲」を出ると京橋から昭和通りを南下し、新橋に向かいます。新橋駅の停留所はJR新橋駅汐留口側のヤクルトビル前。新橋からは大手町を通らず四谷一丁目へ直進。東京メトロ丸ノ内線の新宿御苑前駅を経由して新宿駅西口に向かいます。復路ののりばは小田急百貨店前ではなく、京王バスの高速バス用の26番のりばを使用します。その後、往路と同じルートで渋谷駅に戻ります。
運行系統 | 【050】 往路 渋谷駅~新宿駅西口~新宿御苑~四谷一丁目~大手町(グランキューブ)~バスターミナル東京八重洲~新橋駅 復路 新橋駅~四谷一丁目~新宿御苑前駅~新宿駅西口~渋谷駅 (※往復とも渋谷駅~新宿駅西口間は細かく停車、新宿駅西口~新橋駅間は急行運転) |
時刻は「052系統」と少し異なるので注意。本数は1日3便で変わらずです。
もともとこの路線はめずらしいことづくしで、渋谷駅~新宿駅西口の自社エリアのほかに急行運転で四谷や大手町を経由して新橋駅に乗り入れるというルート自体が面白く、多くの憶測を呼び人気を博していました。山手線の内側に民鉄系のバスが乗り入れること自体がめずらしいですし、バス停を新設してまで乗り入れて燃料電池バスを走らせるということで、将来東京駅のバスターミナルに乗り入れる意図があるのだろうとうわさされていましたが、約一年の運行実績を経て今回ついに東京駅のバスターミナルに乗り入れとなります。ちなみに「バスターミナル東京八重洲」は京王電鉄バスの運営。
「バスターミナル東京八重洲」とは、これまで八重洲口や丸の内口一帯に散らばっていた高速バスののりばを八重洲口の地下に集約するもので、今回は第一期開業となります。主に千葉方面の高速バスや「鍛冶橋駐車場」発着の夜行高速バスなどが乗り入れています(一部移行していない便もあります)。
これまで路上のバスののりばに並んで待っていたのが空調の効いた待合スペースになり、運行会社や方面によって異なっていてわかりにくかったのりばが集約されてわかりやすくなったり、八重洲口から徒歩5分ほどかかっていた鍛冶橋駐車場から八重洲地下直結になったりと、便利なことばかりです。なお、「東京駅JR高速バスターミナル」はそのままです。JR系は八重洲の地上ターミナル、その他は地下のバスターミナル東京八重洲となっていくのでしょう。
実際に乗車してみた
往路 [渋谷駅~新宿駅~バスターミナル東京八重洲]
「050系統」になったことで改めて乗車します。渋谷駅ののりばは、西口側の井の頭線が発着する渋谷マークシティの目の前の2番のりば。もともと京王バスののりばで、ほかに「渋60」「渋69」系統などが発着しています。
渋谷駅発の時刻は、平日・土休日ともに10:20、13:10、17:10の3便。今回は10:20の便に乗ります。行き先も「バスターミナル東京八重洲」に貼りかえられています。
出発3分前ぐらいに回送されてきました。やはり存在感があります。
永福町営業所のD002。八重洲まで1時間10分の旅です。全線を乗り通してもおとな210円、こども110円(IC 105円)の均一運賃です。
平日午前中なのもあって、乗客は5人ほどで出発です。まずは新宿駅西口までの各駅停車を楽しみます。「宿51」系統と同じルートです。渋谷のスクランブル交差点を見ながら神宮通り、公園通りと進んでいきます。
車内はこんな感じ。天井が高い分開放感があります。soraの内装は各社共通。
座席は海外のバスのような感じ。フリーWi-Fiはありません。また、コンセントも使えません。
燃料電池バスは滑るように進むので揺れが少なく、酔いにくいし疲れにくいように思います。NHK放送センターをぐるっと回って井の頭通りへ。
代々木公園駅で停まります。千代田線と乗り換えられます。渋谷駅から代々木公園へもこのバスは便利。
小田急線の参宮橋駅に停まります。十二社通りを北上していきます。
新宿中央公園付近で都庁のビルが見えてきました。ちょくちょく乗り降りがあり、すでに生活に溶け込んでいるのが分かります。
西新宿に入って新宿住友ビル、新宿センタービルと停まります。渋谷から乗ってこの辺で降りる人もいました。確かに座っていけるので楽。車窓から高層ビル群が楽しめます。
モード学園のビルから中央通りに入り、新宿駅西口ロータリーに出ます。この小田急百貨店のビルもそろそろ見納めになるでしょう。この渋谷~新宿間だけでも渋谷の繁華街、NHK、代々木公園、そして西新宿の高層ビル群など、見どころは多くあって飽きません。
新宿駅西口に到着。ここでたくさんの人が乗ってきました。渋谷駅から新宿駅西口まで約30分ほど。モード学園のビルはいつ見ても異彩を放っています。
新宿駅西口ののりばは、小田急百貨店の目の前のWEバスが発着するのりば(WEバスは京王バスが運行)。のりばの番号はありません。JR線で西口の地上階に出て一番近いバス停ですし、京王線や小田急線、丸ノ内線からもすぐのこれ以上ないような立地です。
新宿駅西口を出ると、ここからは急行運転。まずは甲州街道に入り、バスタ新宿を横目に進みます。バスタ新宿には路線バスは入りませんが、バスターミナル東京八重洲にはこのバスが入るということで、やはり珍しい路線です。
次に停車は「新宿御苑」。新宿御苑の入り口の目の前まで来てくれます。もともとWEバスのバス停があり、その後屋根付きの立派なバス停になりました。WEバスは京王バスが運行しているため、ここまではもともと京王バスのエリア。ちなみに復路のバス停は一つ隣の新宿通り沿いの「東京メトロ新宿御苑前駅」バス停なので注意してください。
御苑の横の狭い道を出て旧甲州街道に入り、さらに新宿通りを四ツ谷方面に進みます。KOREA CENTERの文字が。駐日韓国文化院です。今度見学してみたいと思います。
四谷一丁目に到着。都営バスのバス停の隣に新設された京王バス専用のバス停があります。四ツ谷駅からの乗り換えも便利な立地です。
四ツ谷駅や上智大学を眺めながら、新宿通りを麴町方面に進みます。
半蔵門で千鳥ヶ淵を眺めながら左折して内堀通りに入り、さらに右折して代官町通りへ。
皇居の北側を竹橋まで進みます。
竹橋の毎日新聞東京本社の手前で左折します。大手町に入るのに直進せず一度ぐるっと北側を回ります。この東西線竹橋駅付近にバス停があればいいのにと思いました。国立近代美術館や科学技術館などにアクセスしやすくなります。
雉子橋を渡って神田警察通りに入り、再び右折して本郷通りへ。自衛隊の大規模接種会場が見えました。
ようやく次の停車バス停、「大手町グランキューブ」に停車です。グランキューブの敷地内のロータリーまで入ります。ほかにエアポートリムジンバスも発着しています。車内のサインボードには各線の大手町駅の乗り換え情報が出ていました。
一旦日比谷通りに出て、大手町ファーストスクエアの交差点で永代通りへ左折します。この辺はおしゃれなビルばかり。
ここからは新経路。目が離せません。「052」時代は日比谷通りを直進して新橋に向かっていました。
永代通りを挟んで右側は丸の内。
JR線の高架をくぐり、八重洲側に出ます。
東京駅日本橋口のバスターミナルが。
右折して外堀通りに入ります。
東京駅八重洲口を見ながら進みます。グランルーフも丸の内口側に負けず劣らず美しいですね。
終点の「バスターミナル東京八重洲」は、東京駅八重洲口の向かいにできたミッドタウン八重洲の地下にあります。バスはまずミッドタウン八重洲を過ぎてから、あおぎり通りという細い道に入り、地下2階のバスターミナルまで侵入していきます。
第一期開業時点でのバスターミナル東京八重洲は1面6のりばのシンプルな構造。現在は主に千葉方面の高速バスと、夜行高速バスが発着しています。
終点の「バスターミナル東京八重洲」に到着です。1時間10分の燃料電池バスでの移動は快適で、あっという間でした。たった10分の折り返し時間で再び渋谷駅に向けて走っていきます。並んで待ってるお客さんもいました。
バスは到着専用の15番に到着。この後バスターミナルを見学して、午後の15:40発の渋谷駅行きに乗ります。
復路 [バスターミナル東京八重洲~新橋駅~新宿駅~渋谷駅]
バスターミナルを見学し、カフェで休憩したあと、15:40発に乗るために再びのりばに戻ってきました。全体の出発案内にも「新橋駅、新宿駅、渋谷駅」行きが出ています。「新橋新宿渋谷線」というのですね。
ここから新橋駅まで行って、四ツ谷に戻り、新宿駅に向かうわけですが、「052系統」の時代には新橋駅が終点で、到着後バスはおそらく水素の充填に行っていたのが、八重洲ではすぐの折り返し。いまはもはや新橋まで行く必要があるのかという面白いルートです。
京王バス「050系統」は、16番のりばを使用します。日中はなんとこのバス専用。夜は夜行バスが出発します。
5分前ぐらいにバスが入線してきました。この15:40発のバスは朝乗ってきたバスと同じ車両。つまり、一つのバスで2往復しているわけです。第3便も同様か、もう一台のバスかは不明。
側面の表示では「BT八重洲」に。ここから4人ほど乗車がありました。復路は渋谷駅まで1時間20分、新宿駅まで45分の旅です。
ターミナルでは5分おきぐらいに発車があるので常に高速バス車両があり、通り抜けるのはギリギリな感じ。地下2階から再びあおぎり通りへ。
京橋トラストタワーから中央通りに入ります。地下には銀座線京橋駅があります。バスターミナル東京八重洲へは京橋駅からも便利。
一度鍛冶橋通りに入り、右折して昭和通りへ。浅草線宝町駅のあたりです。
バスターミナル東京八重洲を同時刻に出発した京成バスの鴨川行きとここまで一緒でした。あちらは高速道路へ。
一方こちらのバスは東銀座でアンダーパスに入ります。
蓬莱橋の交差点で「JR竹芝水素シャトルバス」とすれ違いました。東京駅丸の内口と竹芝地区を結ぶ無料のシャトルバスです。
一つ目の停車バス停「新橋駅」に到着です。バス停はJR新橋駅からは少し離れた第一京浜沿いのヤクルト本社前。新橋と汐留を繋ぐエリアにあり、便利な立地です。
新橋エリアでは複数の燃料電池バスが走っています。都営バス「業10」系統・とうきょうスカイツリー駅前行きや、東京BRTにも燃料電池バスが投入されています。
新橋駅では乗降はなく、すぐに発車。次は四谷一丁目まで停まりません。ちょうど新幹線が上を過ぎていきました。
そう言っていると向かい側に東京BRTの燃料電池バスが現れました。虎ノ門ヒルズから来て晴海BRTターミナルまで向かうバスです。このバスは築地虎ノ門トンネルをくぐり、外堀通りに入ります。
溜池山王を過ぎて赤坂見附へ。四谷一丁目まで15分間無停車。
再び午前中に通った四ツ谷に戻ってきました。
四谷一丁目に到着です。往路のバス停のちょうど向かい側。
新宿通りを西に進みます。往路では新宿御苑の目の前に停車しましたが、復路では新宿通り沿いの「東京メトロ新宿御苑前駅」バス停に停車します。こちらは再びWEバスのバス停を使用しています。
新宿エリアに戻ってきましたが、往路と経路が異なります。往路は甲州街道をきましたが、復路は反対側である北側の靖国通りに入ります。
新宿区役所や歌舞伎町を横目に直進し、西武新宿駅を見ながらガード下を通って西口側に出ます。
復路ののりばは往路の小田急百貨店前のWEバスバス停とは違い、ロータリーを挟んで向かい側にある26番のりばに停車します。こちらはもともと京王バスと西東京バスのバス停で、高速バスの臨時のりばとしてのほかに、西東京バスの「通勤ライナー」や、京王バス「宿41」系統が発着しています。
ここからは往路と同じルートなので、下車しました。
前身の「052」系統新設時には大変驚きましたが、今回「050」となってさらに進化した形です。京王バスが一般の路線バスとして都心に乗り入れ、しかも急行運転、さらに燃料電池バスでの運行と、わくわくすることづくし。首都圏の様々な燃料電池バスに乗車してきましたが、乗りやすさと路線沿線の魅力、乗車時間とあらゆる面で一番楽しめる路線かもしれません。都心の賑やかな繫華街や高層ビル群、そして御苑や皇居など、変化に富んだとても楽しい路線にたった210円で1時間以上も楽しむことができます。特に新宿以東は停車が少ないため乗り降りが慌ただしくなく、ゆったり観光バスのように車窓を眺めることができます。
京王バスのさらなる発展、そして燃料電池バスのさらなる展開に期待したいと思います。
追記
2023年9月16日のダイヤ改正で、「大手町(グランキューブ)」バス停への乗り入れが廃止されます。また、時刻も変更となります。詳しくはHPを参照してください。
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